財産分与の基礎

「頭金は私の貯金から出した」は財産分与で考慮されるのか

独身時代の貯金や親からの援助で頭金を出した家。離婚で半分に分けるのは納得できない——その感覚には法律上の裏付けがあり得ます。特有財産の考え方と、主張に必要な2種類の立証を入門レベルで解説します。

著者:吉田 健人·読了 約3
「頭金は私の貯金から出した」は財産分与で考慮されるのか

「頭金の500万円は、結婚前に貯めた私の貯金から出した。それなのに家を半分に分けるのは納得できない」。財産分与のご相談で繰り返し聞く声です。この感覚には、法律上の裏付けがあり得ます。キーワードは「特有財産」です。

特有財産とは

財産分与の対象は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産です。婚姻前から持っていた財産や、婚姻中でも相続・贈与で得た財産は「特有財産」と呼ばれ、原則として分与の対象になりません。

独身時代の貯金は典型的な特有財産です。それを頭金に充てた場合、家の価値のうち頭金に対応する部分は、出した側の特有財産として調整される余地があります。親からの援助も、援助を受けた側への贈与と評価されれば同様です。

ただし、どこまで考慮されるかは事案により、考え方にも幅があります。主張の可否や組み立ては必ず弁護士にご相談ください。

主張には2種類の立証が要る

特有財産の主張を通すには、大きく2つの立証が必要になります。

① 資金の流れの立証。頭金がいつ・誰の・どの口座から出たのかを示す資料です。当時の預金通帳、振込記録、贈与契約書、住宅取得等資金の贈与税申告書などが該当します。古い資料ほど散逸しやすいため、心当たりのある書類は早めに探しておくことをおすすめします。

② 価格の立証。購入時の価格(売買契約書で確認)と、現在の時価です。実務でよく用いられる計算は、購入価格に対する特有財産の割合を、現在の時価に投影する方法です。購入4,000万円のうち頭金800万円が特有なら20%。現在の時価が3,500万円なら、700万円が特有部分という計算になります。

①は弁護士の領域、②のうち現在の時価は不動産鑑定士の領域です。両方が揃って、初めて主張が数字になります。

よくある誤解

  • 「頭金がそのまま返ってくる」わけではない。多くの計算方法では、家の値動きに応じて特有部分も増減します
  • 「名義が自分だから全部自分のもの」ではない。名義と実質は別に判断されます
  • 「領収書がないから無理」とは限らない。立証手段は通帳・振込記録など複数あり得ます。諦める前に弁護士へ

まとめ

  • 独身時代の貯金・親からの援助による頭金は、特有財産として調整され得る
  • 主張には「資金の流れ」と「価格」の2つの立証が必要
  • 資金の資料は早めに確保。価格の立証は購入時価格+現在の時価

当事務所では、特有財産の按分計算に必要な時価評価(必要に応じて複数時点)を承っています。弁護士の先生と連携しての対応も可能です。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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