別居中に家を勝手に売られない?──不安なときに確認すべきこと
別居中、相手名義の自宅が勝手に売却されないか不安——という相談は少なくありません。単独名義の不動産の法律上の原則、実務上のハードル、備えとして弁護士と検討すべき手段、そして今できる資料確保を解説します。

別居して調停や協議を進めている間、「相手名義になっている自宅を、勝手に売られてしまうのではないか」という不安を持つ方は少なくありません。結論から言えば、法律上の原則としてはあり得る話であり、だからこそ早めの備えに意味があります。
原則:単独名義なら売却は可能
不動産が相手の単独名義である場合、名義人は法律上、単独でそれを売却できます。配偶者の同意は登記手続上不要です。財産分与の対象になるはずの財産でも、分与の合意や調停が成立する前に処分されてしまうリスクはゼロではありません。
もっとも、実務上のハードルもあります。居住者がいる家は買い手がつきにくく、内覧もできません。夫婦の一方が居住したままの自宅を、他方が水面下で売り切るのは簡単ではありません。過度に怯える必要はありませんが、空き家になっている場合や投資用物件は、より現実的なリスクとして考えるべきです。
備えは弁護士と設計する
処分への備えとしては、調停・審判・訴訟に付随する保全処分(処分禁止の仮処分など)といった法的手段があります。どの手段が使えるか、費用(担保金)に見合うかは事案によるため、必ず弁護士にご相談ください。本稿では制度の存在の紹介にとどめます。
なお、登記情報は誰でも取得できます。相手名義の不動産の登記事項証明書を定期的に確認すれば、所有権移転や新たな抵当権設定の動きを把握できます。
今すぐできるのは「資料の確保」
法的な備えと並行して、今すぐ・自分だけでできるのが資料の確保です。
- 登記事項証明書を取得しておく(現在の名義・抵当権の状況を固定的に記録)
- 固定資産税納税通知書のコピー(自宅に保管されているうちに)
- 購入時の売買契約書・ローン契約書のコピー(後日の評価・特有財産主張の基礎資料)
- 室内の写真(後で室内に入れなくなった場合の評価資料)
これらは、仮に処分の動きがなくても、その後の財産分与の評価・主張で必ず使う資料です。別居前後の今しか取れないものから優先してください。
まとめ
- 単独名義の不動産は、原則として名義人が単独で処分できる
- 保全の法的手段は存在する。要否と選択は弁護士へ
- 登記の定期確認と資料確保は、今日から自分でできる備え
確保した資料をもとに、財産分与に向けた評価の準備を進めたい方は、当事務所にご相談ください。室内に入れない状況での評価にも対応しています。
免責事項
本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。
不動産鑑定士が財産分与の不動産をどう評価するか、必要になるケースや費用は財産分与の不動産鑑定のページでまとめています。
FREE CONSULTATION
鑑定が必要かどうかのご相談だけでも歓迎です
記事に関連するお悩みについて、不動産鑑定士に直接ご相談いただけます。
関連記事

離婚で相手が家を見せてくれない──内覧なしで財産分与の評価を進める方法
離婚の協議中、家に住み続ける相手が内覧を拒み、家を見せてくれない。そんなときでも財産分与の評価は進められます。外観調査・図面・管理組合資料で補う方法、内部の状態が代償金に与える影響、評価書への前提の書き方を不動産鑑定士が解説します。
読了 約14分

査定額が1,000万円違ったら──価格が折り合わない財産分与を動かす4つの打開策
査定額に1,000万円の開きが出て話し合いが止まる。不動産に「正しい1つの数字」が無いことから生じる対立です。中間を取る・第三者評価を入れる・売却して実額で分ける・価格に幅を持たせ条件で調整する。4つの打開策を費用と期間、向く場面で比べました。
読了 約15分

離婚で裁判所鑑定になったら何が起きるのか──申立て・費用の予納・現地調査の時系列
調停が不成立になり審判や訴訟に進むと、裁判所が鑑定人を選任して不動産を評価することがあります。鑑定人を選ぶのは裁判所で、費用は求めた側が先に予納します。申立てから鑑定評価書提出までの流れと期間の目安、費用の負担、当事者側の私的鑑定との役割の違いを整理しました。
読了 約15分