評価の実務

鑑定評価書には何が書いてあるのか──受け取ったら最初に見る5箇所

数十ページある鑑定評価書を初めて受け取ったとき、どこから読めばよいのか。評価額以外に必ず確認すべき5箇所——価格時点・価格の種類・前提条件・評価手法・鑑定士の氏名——を、相手方から受け取った場合の視点も交えて解説します。

著者:吉田 健人·読了 約3
鑑定評価書には何が書いてあるのか──受け取ったら最初に見る5箇所

鑑定評価書は通常30〜50ページ程度の書面で、初めて受け取ると、どこを読めばよいか戸惑うはずです。自分が依頼したものでも、相手方から提出されたものでも、最初に確認すべき箇所は同じです。

① 鑑定評価額と「価格の種類」

まず評価額。そして金額の近くに書かれている価格の種類を確認します。多くの場合は「正常価格」——市場で通常成立するであろう適正価格——ですが、特殊な前提を置いた「限定価格」「特定価格」の場合もあります。どの種類の価格なのかで、その金額の意味が変わります。

② 価格時点

評価額は「いつの時点の価格か」とセットで初めて意味を持ちます。価格時点が1年前なら、その後の市況変動分だけ現在とずれています。財産分与では、裁判・調停の基準時と価格時点がどれだけ近いかが、資料としての力を左右します。

③ 前提条件・調査範囲

「室内には立ち入らず資料に基づき判断した」「賃貸借契約は現状のまま継続すると想定した」など、評価の前提が必ず記載されています。前提が現実と違えば、評価額の意味も変わります。相手方の鑑定評価書を検証するときは、ここが最初の着眼点になります。

④ 採用した評価手法と試算過程

取引事例比較法(似た物件の成約価格から比較する)、収益還元法(家賃収入から逆算する)、原価法(再調達コストから積み上げる)——どの手法をどう適用し、どの試算価格をどう調整して最終評価額に至ったかの過程が書かれています。

専門的な部分ですが、採用された取引事例の場所・時期・単価の一覧だけでも眺めてください。自宅から遠い事例や古い事例ばかりが並んでいないか、という素朴な視点は有効です。

⑤ 鑑定士の氏名・登録番号・利害関係

鑑定評価書には、担当した不動産鑑定士の氏名と登録番号、依頼者との利害関係の有無が記載されます。作成者が特定され責任を負う——これが無記名の査定書との根本的な違いです。

相手方の鑑定評価書を受け取ったら

上の5箇所を確認したうえで、「価格時点が古くないか」「前提条件は実態と合っているか」「採用事例は適切か」に違和感があれば、検証の余地があります。当事務所では、相手方鑑定評価書のセカンドオピニオン(検証・意見書作成)を承っています。検証して問題がなければ、その旨を率直にお伝えします。

まとめ

  • 評価額は「価格の種類」「価格時点」「前提条件」とセットで読む
  • 採用事例の一覧は専門家でなくても眺める価値がある
  • 氏名・登録番号のある責任ある書面であることが査定書との違い

鑑定評価書の読み方について、納品時には口頭でのご説明も行っています。他社作成の評価書の解説のご依頼も可能です。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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