評価の実務

離婚時の「無料査定」の正しい使い方──タダには理由がある

財産分与の準備で不動産の一括査定サイトを使う前に知っておきたいこと。無料査定が無料である理由、営業連絡の仕組み、財産分与の資料としての限界と、それでも有効な使い方を解説します。

著者:吉田 健人·読了 約3
離婚時の「無料査定」の正しい使い方──タダには理由がある

「家の値段を知りたい」と検索すると、まず出てくるのが一括査定サイトです。無料で複数社の査定が届くのは便利ですが、財産分与の場面で使うなら、その仕組みを理解した上で使うことをおすすめします。

無料査定が無料である理由

仲介会社にとって、査定は媒介契約(売却の依頼)を獲得するための営業活動です。一括査定サイトは、あなたの連絡先を複数の仲介会社に提供し、各社はそこから営業をかけます。査定書はいわば営業提案書であり、無料なのは広告宣伝費だからです。

この構造から、2つの傾向が生まれます。第一に、連絡が集中すること。売却の予定が固まっていない段階では、この営業対応自体が負担になります。第二に、査定額が高めに出やすいこと。他社より高い金額を提示したほうが媒介契約を取りやすいためです。

財産分与の資料としての限界

無料査定書には、財産分与の場面で3つの限界があります。

  • 金額の幅:同じ物件で会社によって数百万円の差が出ることは普通です。夫婦それぞれが自分に有利な査定書を持ち寄ると、話し合いはむしろ紛糾します
  • 根拠の非開示:どの成約事例を使い、どう補正したかの記載義務がなく、第三者が検証できません
  • 責任の不在:査定額に作成会社が責任を負うものではなく、調停や裁判では参考資料の域を出ません

それでも有効な使い方

限界を理解した上でなら、無料査定は有効な道具です。

相場の幅を掴む目的で使う。2〜3社の査定を取り、金額のレンジを把握します。各社の金額の「中央値」ではなく、なぜ差が出ているのか(想定した販売期間・リフォーム評価の違いなど)を見るのがコツです。

実際に売却する場面で使う。売却して代金を分ける方針が固まっているなら、査定は本来の用途どおり機能します。

逆に、代償金の金額を決める場面(売却せず一方が住み続ける場合)や、調停・裁判に提出する場面では、根拠を検証できる不動産鑑定士の評価のほうが適しています。

まとめ

  • 無料査定は営業活動の一環。連絡集中と高め傾向を織り込んで使う
  • 相場の幅を掴む・実際に売る場面では有効
  • 金額に争いがある場面・第三者への説明が必要な場面では鑑定評価を

当事務所では、お手元の査定書を拝見して「財産分与の資料としてどこまで使えるか」の見立てもお伝えしています。査定書が出揃ってから行き詰まった、という段階のご相談も歓迎します。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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